森の奥に住む魔物①

昔、昔あるところに。お婆さんと女の子がすんでました。
女の子は明るく優しい子で、家の周りにある花も木も動物も大好きで、彼女のお友達でした。そんな女の子には昔から不思議な力がありました、それはいえの裏にある祠から聞こえてくる声のことです。おはよう、今日もいい天気だよ。あなたはどう?
いつしか女の子にとっての友達が祠にいる見えない誰かになったのは自然な流れです。
今日は調子がいいみたい。聞こえてくる声に嬉しそうに頷く女の子が聞いたのは人の悲鳴です。顔を青くさせて自分をみる大人の男が震えた指でその祠を指して発した言葉の意味を彼女が知る時はくるのか。



――――魔物の子だ。



その祠に閉じ込められたまがまがしい災いが目覚めたことが、この悲劇のはじまりともいえよう。







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浮遊感があけた一瞬、どさりと感じた体の痛みに顔をしかめて腰を擦る。
痛い、うめきながらも開いた視界の中で自分をみて呆けた顔をしている視線に体を震わせたのも無理はない。なんでついてきちゃったの、真白。聞こえてきて声にはっと視線を下に向けると同じく床に座ったまま苦笑する金髪男の顔が視界に入る。



「…リーダー……誰、この子」


長居テーブル席の椅子に腰かけたまま、驚いた表情をしている女性の言葉に立ち上がった男が服についた埃を払う。きらりと光った耳朶にひかる金色のピアスが視界の端を踊る。



「…罪人の被害にあった対象なんだ。名前は結城真白。料理が得意みたい」
「いや、そんなこと聞いてないわよ」



日本人離れした赤い髪を揺らして、ジャージ姿のままこちらをみる彼女の蒼の眼がほそまる。その威圧感にひくりと頬を揺らした俺の腕を掴んだ掌に、視線を向ければこちらをみてにこりと笑う男の姿がある。



「―――俺のお嫁さんになる予定だから、誰も手をださないでね」



ね、真白と。ウインクをしてきた男の言葉に、驚愕という言葉を表情に載せる何人かの視線の中。顔を真っ赤にしていた俺の拳が男の顔にめり込まれる。
いひゃーい!泣きながら顔を押さえる男を見下ろしながら舌打ちを零す。
俺は男だって何度も言っているだろーが、呟いた声が怒りの色を持つのも無理もない。



「……おい、あんた」
「はい」
「…どういうことがいちから説明しろ」


ぴくり、と肩を震わせた男の目が俺の顔を捉える。ゆるりと浮かんだ柔らかい笑みに、む、と唇を尖らせる。



「そうだね、ここに自分の意思できちゃったし、色々と説明しないといけないね。」


ひとまず、みんなあつめて貰っても大丈夫かな広葉?そう発した男の言葉にはあ、とため息をはく彼女の唇が声を紡ぐ。



「―――はいはい。」